或る独りのろまんてぃすと

思いついたことを、支離滅裂に書く

形似るものに魂は宿るのか~『アンドロイドお雪』

SFハードボイルドの傑作映画『ブレードランナー』が公開されたのは1982年。

SFのサブジャンル、サイバーパンクのはしりとも見なされているが、その原作、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が出版されたのが1968年で、その邦訳は1969年。

まあ、で、その1969年に出版された、平井和正『アンドロイドお雪』もまた、サイバーパンク的で、ハードボイルド・ミステリー要素の強い作品である。

この作品が、電子書籍で再版されたんで、数十年ぶりに再読した。何しろ初めて読んだのは中学生の時だったから。だいたい同系統の作品『サイボーグ・ブルース』や『エスパーお蘭』(作品集『悪徳学園』収録の中編)に比べると、印象が薄かったんだけど、それでも読んでるうちに、ああ、こんな話だったなと、懐かしく思い出していた。

シルバーシティ警察の刑事、野坂は、幻想剤密売犯の老人、五反田より特A級アンドロイドのお雪を贈られた。その後五反田老人は死亡。特A級アンドロイドは極めて高級品のため、野坂は五反田老人の真意を計りかねて困惑し、同僚の刑事たちからも妬まれることとなる。また、野坂には、シルバーシティの権力者、ハロルド・ポーターの娘、ケイ・ボーターと恋仲であり、そのことでもまた、周囲との軋轢を生んでいく。さらに、特A級アンドロイドは極めて人間に近く作られているものの、所詮は人工物、しかしお雪にはそれを越える何かがあった。

 お雪によって、幻想剤漬けにされた野坂を救うため、お雪の正体を探るケイ・ポーター。彼女にもまた、秘密があって、それがラストのオチになるんだけど、たとえ人工物であるアンドロイドであろうとも、人間と同じような思考を与えられてしまうと、そこに心が芽生えてしまうのか、というところが、この作品のテーマであり、後の『ブレードランナー』とも共通するところでもある。まあ、『ブレードランナー』より、藤子・F・不二雄の短編『マイロボット』の方が、物語的に近いか(こっちは人型ではないが、恋愛感情で暴走するとこが共通してる)。

もう50年も前の作品だけど、今読んでも全く古さを感じさせないところがさすが。

この勢いで、平井和正初期作品の復刻を進めて欲しいな。

アンドロイドお雪

アンドロイドお雪

 

 

 

 

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