或る独りのろまんてぃすと

思いついたことを、支離滅裂に書いてる

落ちこぼれの仙人さ

夢枕獏といえば、今ではやっぱり『陰陽師』の作者として、知られるようになったと思う。

実際、『陰陽師』は、マンガ化され、映画化され、TVドラマ化され、舞台化もされ、あらゆるメディアでも展開されているし、何しろ、単行本も年一冊、コンスタントに出版されている。

しかし、わたしにとっては、初期の伝奇バイオレンス作品の方に、思い入れがある。

高校生の頃、『キマイラ吼』シリーズに出会い、獏さんを読み始めた。当時5巻ほど出版されてたけど、同じソノラマ文庫から出版されていた菊地秀行先生の著作は、『吸血鬼ハンター”D”』や『トレジャーハンター』、その他単発作品合わせて10冊以上あったんじゃないかしら。

なぜキマイラを選んだのかというと、やっぱり、自分の人生において多大な影響を与えた、平井和正ウルフガイ』シリーズ(ウルフガイについては、いずれ書きたいと思ってるが、思い入れが強すぎて、どう切り出すか思案中)に似てそうだ、と思ったからだ。

で、夢枕獏面白え、他の作品も読んでやろ、みたいなんで、『闇狩り師』も読むことにした。『闇狩り師』は、『キマイラ吼』と同一世界の設定なんで、続けて読むには申し分なかったし。

『闇狩り師』、主人公は九十九乱蔵、身長200cm、体重145kg(初期作品は147kgと記述されているが)、鍛え抜かれた体格で、台湾で中国拳法と仙術を修行し、霊に憑かれやすい体質と、その底なしの体力で、妖物を祓う、祟られ屋である。愛車のトヨタランドクルーザーと、ビブラムソールのダナーワークブーツにはこだわりがある。相棒に、霊を喰らう猫又、シャモン(沙門)を連れている。普段はただの小柄な黒猫だが、霊を前にすると興奮してしっぽが二つに割れる。常に霊がまとわりつく乱蔵の傍らにいると、食いっぱぐれがないということで、乱蔵の広い肩に居着いている。『陰陽師』で、安倍晴明の兄弟子、賀茂保憲が使う式神が、猫又のシャモンとなってるが、果たして『闇狩り師』のシャモンと、同一存在なのか。

その体格と、一見厳つい風貌だか、見る者を安心させる笑みを浮かべ、弱い者には限りなく優しく振る舞う、まさにスーパーヒーローの王道。同じような体格を誇る『魔獣狩り』主人公の一人、文成仙吉が極めて屈折してるのとは好対照である。まあ獏さんのシリーズ主人公で、屈折さがないのは、乱蔵と晴明くらいだけど。

そんな『闇狩り師』、1987年来留間慎一版全1巻、1994年石川賢版全1巻、2001年木村周司版全4巻、それにキマイラシリーズとのクロスオーバー、2009年伊藤勢『闇狩り師 キマイラ天龍変』全2巻と、なんかだいたい7~8年おきにマンガ化されてる。キャラが立ってる乱蔵は、絵になりやすいんだろう。このペースだと、今年くらいまたやらないかな。あるいは映像化。実写は難しそうだからアニメでもいいか。そういえば、1987年制作のOVA『魔龍戦記』の主人公は乱蔵に似てる。ストーリーもまさに伝奇バイオレンスだし、この作品確実に夢枕獏菊地秀行の世界を取り入れてるぞ。

そんな獏さん作品を代表するキャラクター、九十九乱蔵。しかし、作品数は少ない。現時点で、短編13作、長編『蒼獣鬼』『崑崙の王』、中編『黄石公の犬』の16話。『崑崙の王』から『黄石公の犬』までは21年空いてるし、連載中の長編『摩多羅神』は1990年、当初『宿神』のタイトルで始まって、長期中断を経て、もう27年だよ。『宿神』完結のあと、さらにもう一本、乱蔵が南米で活躍する長編の構想もあったようだけど、おそらくもう書かれることはないだろう。とにかく、『摩多羅神』はちゃんと出して、それと他のシリーズ、『キマイラ』終わらせて、『餓狼伝』は終わらなくていいから、『黄金宮』の続きを書いてほしいな。

逆に、今から初めて『闇狩り師』を読む人は、4冊一気にまとめ読みができて、いいかもね。巻数少ないから、手を出しやすい。それにおもしろいのは間違いないんで。

闇狩り師 《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

 
闇狩り師 蒼獣鬼《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 蒼獣鬼《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

 
闇狩り師 崑崙の王《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 崑崙の王《新装版》 (トクマ・ノベルズ)

 
闇狩り師 黄石公の犬 (トクマ・ノベルズ)

闇狩り師 黄石公の犬 (トクマ・ノベルズ)