或る独りのろまんてぃすと

思いついたことを、支離滅裂に書く

人は、何故、闘うのだろうね〜『獅子の門』

夢枕獏さんの格闘小説といえば、

餓狼伝

 既刊通算16巻(『餓狼伝』13巻『新・餓狼伝』現在3巻継続中)

『牙の紋章』

 全1巻

『牙鳴り』

 1巻で中断

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部

 全1巻、1995年NHK奥田瑛二主演でドラマ化

東天の獅子

 天の巻全4巻、続編地の巻執筆予定

等があるが、ここで語りたいのは、『獅子の門』である。

この5月から『獅子の門』全8巻が文庫化され、7ヶ月連続刊行となった。

いやあ、これからこの物語を読む人はいいなあ、一気に全巻間を開けずに読めるんだから。

1巻目の群狼編が、光文社カッパノベルズで刊行されたのは、1985年8月。

最終巻の鬼神編が刊行されたのは、2014年3月。

なんと、完結まで29年もかかってるよ(同時期に始まった『餓狼伝』はまだ続いてるよ。タイトルを『新・餓狼伝』と改めた辺りから、展開がグダグダになってるけど)。

途中、3巻目青竜編1988年6月から4巻目朱雀編2002年3月と、14年の中断期間もあった。

わたしは、20歳前後ぐらいから読んでたけど、完結したときは、いやまあ、なんとか終わってよかったと、感慨深かった。もっとも、5巻目辺りで終わらせることができたんじゃないかな、とも思ってるけど。

物語は、以下の5人の青年たち、

芥菊千代

武林館空手茅ヶ崎支部道場指導者の鳴海俊夫より空手を学ぶ。後に鳴海の自流派設立に伴い、鳴海の一番弟子に。

竹智完

かつて武林館空手を学ぶもその後極道の道に。羽柴彦六に救われ、世界各地を放浪しながら拳法を習得。その後アメリカでブラジリアン柔術家マーカスの元で柔術を学ぶ。尚、鳴海のライバルで、武林館空手最強の男、麻生誠とは武林館門下生時代に親しかった様。

志村礼二

喧嘩に明け暮れる不良高校生だったが、それまでただの優等生だと思っていた同級生の加倉文平が、実は闘いにも強い男と知ってライバル心を抱く。武林館に入門するが、文平と同じ練習をしているだけでは文平を超えられないと考え、久我重明に師事。

加倉文平

生真面目な性格で、文武両道を実践する。真剣師(賭け将棋で生計を立てる博徒)の加倉文吉を養父に持つ。

室戸武志

幼少の頃より、プロレスラーの父、室戸十三に徹底的に肉体を鍛え上げられる。故あってフジプロレスに入社し、赤石元一ら先輩レスラーと共に、総合格闘家を目指す。

彼らが、謎の拳法家羽柴彦六と出会い、それぞれ己の理想とする格闘家の道を歩むものである。

と、なってるんだけど、さらに脇だったキャラクターの、

鳴海俊夫

ライバルである「努力できる天才」麻生誠に勝てず、突きによる顔面への攻撃が禁じられている武林館ルールに疑問を持ち、武林館を辞し、直弟子の菊千代と共に、顔面への突きありルールを採用する自流派、鳴海塾を立ち上げる。小学生から高校生の頃まで、柔道家天城六郎より柔道を学んでいる。

赤石元一

武林館創始者、赤石文三を父に持ち空手を学ぶが、プロレスラーに転向。ブラジリアン柔術家マリオ・ヒベーロと対戦し敗北。強さを求めて久我重明の元を訪ねるが、志村に敗北。その後紆余曲折を経て自らの原点である空手に回帰する。

鹿久間源

巨漢の格闘ジャンキー。天城六郎より技を習う。同じ天城門下だった鳴海に対しては「先輩」と(馴れ馴れしく)呼ぶ。すでに武術家をセミリタイアしてたとはいえ、並の格闘家なら十分あしらえる実力を持つ重明の兄久我伊吉を撃破。トーナメントに出場するため、何かと陰謀を巡らし、周囲を混乱させる。(こいつの登場で、5巻で終わらなくなったんじゃないか)

そして物語のキーパーソン、

羽柴彦六

拳法の達人。見かけは30代くらいだが、実際の年齢は不詳。常に各地を放浪している。そのため、鳴海俊夫、赤石文三、加倉文吉ら、知人も多い。かつて久我重明の師、萩尾流古武術萩尾老山を倒し、さらに久我伊吉を倒したことで、重明より対戦を挑まれている。

久我重明

通称「暗器(隠し武器)の重明」。黒い肌、黒い髪。黒いシャツと黒いズボンを着、黒い靴下に黒い靴を履き。おそらく下着も黒いだろうと形容される黒い男。兄伊吉と共に萩尾老山より萩尾流古武術を学ぶが、その技はもはや久我流ともいえる、何人も学ぶことのできない(フィジカル的でなくメンタル的に)レベルに達している。師と兄を倒した彦六を強い男と認め、その彦六と闘うことを切望している。たいへんインパクトのあるキャラクターで、余談だが板垣恵介による漫画版『餓狼伝』にも登場。その作中「必要な分は見せたということだ」「これ以上見せぬ」のセリフは、ネット上によく広まっている。

なんか、登場キャラクター紹介だけで長々と書いてしまったが、まあ、これらのキャラクターが、闘い合いながら、それぞれ自分の理想の格闘、ひいては人生、生き方を選び歩んでいく物語だな。

とにかく、迫力ある格闘シーンがひたすら続くけど、闘いの中で自分を見つめ、成長していく青年たちに、存分に感情移入して読み進めたい。

読み始めたとき、わたし自身この主人公たちと同世代だったしね。『餓狼伝』の丹波文七は30代だから、やっぱり『獅子の門』の方が好きだった。

格闘小説だけど、青春小説としても、秀逸な物語である。

獅子の門 群狼編 (光文社文庫)

獅子の門 群狼編 (光文社文庫)

 

 

 

 

 

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