或る独りのろまんてぃすと

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シュワルツェネッガーアクションの確立~『コマンドー』

コナン・ザ・グレート』(1982年)で寡黙な古代の剣士を、『ターミネーター』で未来の殺人アンドロイドを演じ、アクションスターとしての地位を確立した、アーノルド・シュワルツェネッガー(以下シュワと表記)が、ようやく現代の人間(超人的戦闘力を持ってるが)で、セリフも多い主人公を演じた快作、『コマンドー』。

鍛え抜かれた肉体で、大量の銃器を使いこなし、おもしろセリフを吐く、そんなシュワの芸風を確立させた記念すべき作品である。

なお今回のこの記事は、思いっきりネタバレしてるんで、一応注意しておくけど、今更『コマンドー』のネタばらしをしても、困る人はそういないんじゃないかと思うけど。それと引用してるセリフは、玄田哲章吹き替え版に準拠してるんで。

かつて精鋭のコマンドー部隊を率いていた、ジョン・メイトリックス大佐(シュワ)は、今は退役し、一人娘のジェニーと、林業で生計を立てながら静かに暮らしていた。そんなある日、メイトリックスのかつての上官カービー将軍が訪れ、元部下のローソン、フォレスタル、ベネットが相次いで殺されたことを伝える。

しかし、ローソンはゴミ回収業者に偽装した敵にあっさり射殺されるわ、車のセールスマンをしていたフォレスタルは展示車を奪われて轢き殺されるわ、こいつらほんとに元精鋭の兵士だったのか、いささか疑問に思わざるをえない。『プレデター』でシュワ演じるダッチ少佐の部下はみんな屈強だったしな。

カービー将軍は、メイトリックスの護衛に二人の護衛の兵士を残して去って行ったが、その後謎の武装集団が、メイトリックスの小屋を襲撃、護衛の兵士もあっさりやられ、ジェニーを連れ去られる。メイトリックスはなんとか追跡するが、そこに現れたのがベネットだった。ベネットはメイトリックスの元部下だったが、殺人を楽しむ性格破綻者だったため、部隊から追放されていたのだった。「ベネット!殺されたんじゃ?」「残念だったなぁ、トリックだよ」。そして、コマンドー部隊の活躍で、バル・ベルデ共和国の独裁者から失脚したアリエスより、ジェニーの命と引き替えに、バル・ベルデの現大統領の暗殺を強要される。そしてバル・ベルデ行きの旅客機に見張りのエリンケスと共に乗せられることとなる。空港で去って行くベネットに「アリアスにいくら貰った?」「10万ドルポンとくれたぜ。だけどな大佐、お前をぶち殺せと言われたら、タダでも喜んでやるぜ」

「I'll be back(必ず戻ってくるぞ)」

もとは『ターミネーター』で、警察署襲撃前に放つセリフだったが、好評だったのかその後のシュワ映画の定番のセリフとなった。この映画ではこのシーンで使用。

「メイトリックス、楽しみに待ってるぜ」 

で、軽口をたたく一味のサリーには、「面白い奴だな、気に入った。殺すのは最後にしてやる」 

ちなみに、バル・ベルデは架空の国家だが、『プレデター』での事件の舞台でもあり、『ダイ・ハード2』の敵の麻薬王が独裁者として君臨してる国でもある。

飛行機に乗ったメイトリックスは、一瞬の隙を突いてエリンケスの首をへし折って、旅客機を脱出。航空機到着までエリンケスの死が発覚しないよう、キャビンアテンダント「連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる」と頼んでおいて。

メイトリックスが旅客機で飛び立ったのを見届けたサリーは、搭乗便がキャンセルになって暇をもてあましていたキャビンアテンダントのシンディーをナンパしようとしていたところを、メイトリックスが見つけ、半ば強引にシンディーに協力を求める。しかしメイトリックスに不信感を抱いたシンディーは、ショッピングモールの警備員に助けを求める。屈強なメイトリックスの肉体から、手強い相手と感じた警備員は、仲間に応援を頼む。曰く、「容疑者は男性、190cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ」

ショッピングモールで大乱闘を演じたあと、シンディーの車でサリーを追う。シンディーはまくし立てる。「あんた一体なんなのよ!車は盗む!シートは引っぺがす!あたしはさらう!娘を探すのを手伝えなんて突然メチャクチャは言い出す!かと思ったら人を撃ちあいに巻き込んで大勢死人はだす!挙句は電話ボックスを持ち上げる!あんた人間なの!?お次はターザンときたわ!警官があんたを撃とうとしたんで助けたわ!そしたらあたしまで追われる身よ!一体なにがあったのか教えて頂戴!」対してメイトリックスは一言「駄目だ」

 そんなこんなでサリーを捕らえ、左腕一本でサリーを崖の上に釣り下げるメイトリックス。一味のクックと落ち合うモーテルの部屋の鍵を奪うと、「お前は最後に殺すと約束したな」「あれは嘘だ」と、手を離す。

 モーテルで、メイトリックスとクックの壮絶な殴り合いの末、メイトリックスの一撃で倒れた拍子に椅子の脚に体を貫かれクックは絶命。仕方ないのでクックの乗ってきた車のダッシュボードをあさる。「こいつを使おう、奴にはもういらん」と言ってそのままクックの車を奪っていくメイトリックスたち。

なんだかんだでアリアス一味のアジトを割り出し、武器を調達するためどこから持ってきたのかブルドーザーで銃砲店に押し入るメイトリックス。だが、警官隊に包囲されてしまった。拘束されたメイトリックスはカービー将軍に連絡を取ってくれるよう頼むが、警官たちは取り合わない。そこにシンディーがロケットランチャーを発砲して、その騒ぎに乗じて警官隊を振り切る。「どこで使い方を習った?」「説明書を読んだのよ」

とにかく、飛空艇でアリアス一味のアジトのある島に向かうメイトリックス。一方メイトリックスの起こした騒ぎの尻ぬぐいに奔走するカービー将軍。「通信隊に連絡して警察と沿岸警備隊の無線を残らず傍受させろ」「何が始まるんです?」「第三次大戦だ」

島の沖に到着したメイトリックス、シンディにカービー将軍へ無線での連絡を頼み、黒いパンツ一丁でゴムボートに乗り、島に上陸する。

ボートを漕ぐごとにうねる筋肉。ここはシュワの筋肉美を堪能するシーンだ。素晴らしい。

上陸したメイトリックスは、次々と装備を身につける。

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その頃、囚われたジェニーは、監禁されてる部屋から密かに脱出を試みる。父に教わったんだろうな。

アリアスの私兵の態度を皮肉るベネット。対して反論するアリアスだが。「ベネット君、私の兵士は皆、愛国者だ」「ただのカカシですな。俺達ならまばたきする間に皆殺しにできる、忘れないことだ」 

クレイモア地雷を仕掛けながら、兵士を始末していくメイトリックス。戦闘開始だ。しかし、メイトリックスがバル・ベルデに到着していないことを知ったアリアスは、ベネットにジェニー殺害を命じる。

メイトリックスは、クレイモア地雷を起爆させ、次々と派手に建物を爆破する。その爆発音を耳にしたベネット、メイトリックスが乗り込んできたことを知る。「やっぱりやって来たか。さすがだメイトリックス」。ジェニーを監禁している部屋に向かうが、ジェニーはすでに脱出に成功。追うベネット。

でもクレイモア地雷とは、一方向に榴弾を飛び散らせる対人地雷で、建物を吹っ飛ばす爆薬ではないんだが。

銃撃戦でバッタバッタと敵を倒していくメイトリックス。この映画でメイトリックスが殺害した人数は合計74人にのぼるらしい。

メイトリックスは敵兵の手榴弾で右脇腹を負傷し、物置小屋に逃げ込む。取り囲み一斉射撃する敵兵。しかしメイトリックスは、小屋に置いてあった鋤や回転鋸の刃や斧や鉈で反撃。そして敵兵の銃を奪い、ついにアリアスの屋敷に突入。アリアスをショットガンで射殺。

ジェニーを探し屋敷の地下へ。そしてジェニーを見つけ出す。だがベネットの方が早くジェニーを捕らえ人質にする。メイトリックスに拳銃を発砲するベネット。右手を負傷するメイトリックス。しかしメイトリックスはベネットを挑発し、ジェニーではなく自分にベネットの注意を引くよう仕向ける。「来いよベネット!怖いのか?」挑発に乗ったベネット。拳銃を投げ捨て、「ブッ殺してやる!ガキなんて知らねぇ!イッヒッヒッヒ。ガキにはもう用はねぇ!アハハハハ…ハジキも必要ねぇやぁハハハ…誰がテメェなんか!テメェなんかこわかネェェェ!野ぁ郎ぉぉぶっ殺してやああぁぁる! 」

ナイフを両手で、まるで祈りを捧げてるかのように顔の前にかざして、半泣きみたいな表情で叫ぶベネット。メチャメチャ怖がってるやん。

まあともかく、メイトリックスとベネットの壮絶な一騎打ち。メイトリックスに殴り飛ばされて電線に接触、電流を浴びてもへこたれないベネット。タフすぎる。しかし徐々に不利になるベネットは、ついに拳銃を拾い、「畜生ぉ!眉間なんか撃ってやるものかい!ボールをフッ飛ばしてやる!」だが一瞬早くメイトリックスは、壁面に設置されているパイプを引きちぎり、ベネットに投げつける。

パイプがベネットの胸を貫き、背後のタンクまで突き刺さる。そしてタンクから蒸気がパイプを伝って吹き出す。「地獄に堕ちろ、ベネット! 」

このセリフ、原語だと「Let off some steam」で、直訳すると「蒸気を出す」となり、吹き出す蒸気とかけたシャレだろう。だがこれは英語の言い回しで「鬱憤を晴らす」という意味になり、ベネットを倒してさっぱりしたぜ、という意味合いもあるのか。

事が済み、カービー将軍がメイトリックスを出迎える。再びメイトリックスを軍に迎え入れようと打診するカービー将軍。しかしメイトリックスは断る。最後に「また会おうメイトリックス」と声をかけるが、メイトリックス、ジェニーと、そしてシンディーを見つめたあと一言「もう会うことはないでしょう」 

で、映画は大団円を迎えるのであった。

ラストでメイトリックスが、「もう会うことはないでしょう」 と言ったとおり、続編の企画はあったものの、製作されることはなかった。しかしこの映画の後、シュワ映画の快進撃が始まったわけだし、続編用に書かれた脚本を元に修正が加えられ『ダイ・ハード』が製作されたりと、80年代アクション映画の代表的作品であることに間違いないだろう。

 

 

 

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