或る独りのろまんてぃすと

思いついたことを、支離滅裂に書く

平井和正作品を久々に紙で読めるぞ\(^o^)/

平井和正先生没後3年たった先月、早川文庫版ウルフガイシリーズ『狼の紋章(エンブレム)』『狼の怨歌(レクイエム)』が復刻し、今月は『日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース』が出版された。2008年に出版された平井和正最終作『幻魔大戦deepトルテック』はハードカバー全3巻セット通販限定で21600円もするから、手が出なかった。

ウルフガイについては、また改めて書きたいと思っているが、『虎は目覚める/サイボーグ・ブルース』は初期短編10編に、長編『サイボーグ・ブルース』、オマケに『ゾンビハンター』の原型、桑田二郎先生と組んだコミック『デスハンター』で、『ゾンビハンター』で書かれなかったラストエピソードの、「デスハンター エピローグ」が収録されている。

個人的には、短編10編のセレクトは順当といったところ。わたしの好きな『次元モンタージュ』も入ってるし。まあ欲を言えば、ウルフガイの外伝的作品『“女狼”リツコ』(『悪徳学園』をあえて外してでも)も読みたかったなあ。あと『魔女の標的』とか、コメディっぽい『東京が大変だよ』も印象に残ってる。タイトルは忘れてけど、内容はなんとなく憶えてるのもあるし、逆にタイトルは憶えてるけど、内容忘れたのもある。何しろ読んだのが中学生の頃だし。

長編は、現在も電子書籍で読める『サイボーグ・ブルース』より、『アンドロイドお雪』の方が良かったなあ。

しかし、50年ほどたった今読んでも全然古びてない。むしろ今書かれたと言われても納得してしまうかも。現代においても、まだまだあらゆる差別は続いてるし、悲しいかな、人間の本質の悪い部分はそうそう簡単には改善されないんだよな。でもそんな中でも、毅然とした心を持ち、誇りを持って生き抜いていく、わたしはそれをウルフガイ犬神明から学んだんだよ。

それにしても、平井和正初期作品を、もっと読みたいなあ。電子書籍でもいいからさあ。

f:id:romanticist:20180206234918j:plain

 

 

 

follow us in feedly

S(少し)F(不思議)藤子・F・不二雄短編マンガの世界~『流血鬼』

リチャード・マシスン作『アイ・アム・レジェンド』(かつての邦題『吸血鬼』『地球最後の男』)は、1964年にヴィンセント・プライス主演で『地球最後の男』、1971年にチャールトン・ヘストン主演で『地球最後の男 オメガマン』、2007年にウィル・スミス主演で『アイ・アム・レジェンド』と、3度も映画化されている、不朽の名作SFである。

藤子・F・不二雄短編作『流血鬼』は、その『アイ・アム・レジェンド』を下敷きにして書かれた作品であろう。

冒頭から、主人公の少年が木の杭を寝てる人に突き刺して、血が飛び散るスプラッタ描写と、なかなかのインパクト。

スプラッタ描写なら、『モジャ公』にもあるんだけどね、その時はわたしはモジャ公読んでないし、藤子先生こんなのも描くんだ、とちょっと驚いた。

ルーマニアから発生した、感染すると人間が吸血鬼に変わるマチスン・ウイルス(マシスンに対するオマージュを捧げたネーミングであろう)により、人類は滅亡の一途を辿っていた。感染を逃れた主人公とその親友は、吸血鬼を殺害しながら生き延び、人類再興への希望を願っていた。しかし親友が吸血鬼たちに捕らえられ、逃げ延びた主人公の前に、すでに吸血鬼と化した主人公のガールフレンドが現れて、自分たちこそ新人類であり、抵抗する人類は新人類を殺し続けるいわば「流血鬼」である、と主人公に降伏するよう説得するが…

人類側から見れば、血を吸って人を殺す(ように見える)新人類は、残酷行為を行う怪物だが、新人類にとっては、杭を打ち込んで殺す(新人類はその程度では実は死なないが)人類はやはり残酷行為を行う存在である。つまり片方の視点が正当であっても、もう片方の視点ではそうではないという価値観の相違、またそれがどんな手段であっても、自分たちが正当と考えるなら、それは許容されるという考え方に対する疑問が、本作のテーマだと、わたしには思える。

だから、ラストシーンは、ハッピーエンドとしても、バッドエンドとしてもとれるんだよね。

藤子・F・不二雄少年SF短編集 (2) (小学館コロコロ文庫)

藤子・F・不二雄少年SF短編集 (2) (小学館コロコロ文庫)

 

 

 

 

follow us in feedly